食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さのもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。
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講師:池本 真二 |
講義編①では病気の予防や回復と食事の重要な関係について、講義編②では食事に関する環境問題や肥満についてご説明しました。
今回は、食事バランスの管理方法について具体的にお話ししたいと思います。
何をどのくらい食べたらいいのかの参考資料としてご紹介したいのが、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」です。国民の栄養素摂取状況の調査や血液検査のデータをもとに、5年ごとに食事の基準値が見直されています。
そのほかに、必要摂取量をビジュアルで表した「食事バランスガイド」があります。
画像引用:http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/yun/use.html
「食事バランスガイド」は、下記のようにコマの形をした図になっています。上から主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物に分けられています。
このコマは、水分が軸になっています。一番上にはコマを動かすために運動をしている人が書かれていますが、活動をして水分補給がされないと脱水症状になってしまうので、水分はとっても大切です。また、嗜好品はコマを回す紐として表されています。治療食を摂取している方でない限りは、お菓子がダメということはありません。食事を楽しむための演出も必要ですし、そのために重要なのがバランスだということを示しています。
食事バランスガイドは、厚労省・文科省・農水書の三省それぞれが作成している「食生活指針」がもとになっています。その中では、食育の観点から「どのように食べるのか」ということについて10項目に分けられています。
まず「食事を楽しみましょう」から始まり、生活リズムやバランス、食塩や脂肪についても書かれています。わたしがもっとも重要だと思うのは、10項目めの「自分の食生活を見直してみましょう」です。いくら人にいわれても、自分で自分の食事のことを意識しなければ、ここに書いてあることは何の意味も持ちません。
その他には、商品パッケージに表示されている「栄養成分表示」の数字も参考にしてみてください。
管理しなければいけないのは全体のエネルギー量なのですが、個人で判断するのはなかなか難しいと思います。そのために一番有用なのは、体重です。週に一度は体重を測り、主食、主菜、副菜、副々菜、乳製品を摂っているかということだけ確認してもらえると、エネルギー管理も栄養バランスも確保されるかと思います。
専門家が使うことの多い「食事摂取基準」は、健康維持と増進、生活習慣病の予防を目的に、エネルギーと各栄養素の摂取基準を示すものです。軽度の疾患はあるものの病気のガイドラインは出ておらず指導されていないという方は、食事摂取基準を意識していただければいいかと思います。
その際に重要なことは、1日単位で見ると少しオーバーしたりバランスが悪かったりしても、2日あるいは1週間のトータルで見たときに基準に合うようにすれば大丈夫だということです。他には、口から摂取したものだということも重要です。最近ではサプリメントがありますが、摂り過ぎによる問題もありますので、摂取量には気をつけていただきたいと思います。
食事摂取基準で示されているエネルギーの摂取量の基準値は、ひとつだけです。エネルギーが少ないと低栄養の状態になり、痩せて体調が悪くなります。多い場合は肥満になり、健康障害を起こします。
これに対し、栄養素はそれぞれについて、目安量、推奨量、推定平均必要量という基準が設けられています。その他にも、過剰摂取によって障害を起こすレベルが「耐容上限量」で決められています。これが決められた背景には、サプリメントがあります。摂り過ぎによっても、栄養障害や健康障害をきたすということです。また、生活習慣病の予防のための基準として、目標量も定められています。
体質や遺伝ケースは個々で異なり、人によっては摂取レベルが耐容上限量より低い値でも健康障害をきたす可能性がありますので、できるだけ耐容上限量に近づかないようにしていただきたいと思います。
生活習慣病の予防として、最初に出てくるのが食塩です。塩分の必要量は1日1.5g程度といわれています。しかし日本人の現在の摂取量は、地域によって異なりますが、10g前後です。高血圧予防の観点で言うと、6gくらいに下げたいところです。ですが、日本食の基本は醤油であり味噌であるので、下げるのは非常に厳しいです。そのため、当面の目標として7〜8gを目標にし、血圧が高い方については6gという数字が提案されています。