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【料理アカデミー】食と健康vol.1-講義編④「基礎代謝を調べて、賢く食べよう」

食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。

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講師:池本 真二
聖徳大学教授。日本人の栄養必要量の策定や生活習慣病予防の観点から、高脂肪食摂取によって惹起される肥満、糖尿病、高脂血症などの栄養性慢性代謝性疾患発症予防に関する研究を行っている。

 

講義編①〜③のおさらい

講義編①では病気の予防や回復と食事の重要な関係について、講義編②では食事に関する環境問題や肥満についてご説明しました。前回の講義編③では食事バランスの管理の仕方をご紹介したので、今回は、食事の消費に関わる「代謝」についてお話しします。

 

必要エネルギー量の求め方

エネルギーは摂取量と消費量のバランスが重要だと言いましたが、成長期の方は体をつくらなければいけないので、摂取量の方が多くなければ困ります。成人期の方は、バランスが保って出納を0にすることが基本となります。
必要エネルギー量は、基礎代謝量に活動レベルをかけた値です。病気の方は代謝亢進をする必要があり、たとえば熱が出ている場合には、エネルギー消費が高まるのでたくさん食べなければいけません。病態は別で考慮する必要がありますが、健常な方であれば「基礎代謝量×活動量」で求められます。

 

基礎代謝量と活動量を調べるための、計算方法

基礎代謝量がわからない場合は、標準体重に25~30kcalをかけた数字が概算値となります。標準体重は、体格指数であるBMIの標準値22に、ご自分の身長(単位はメートル)を2回かければ求められます。たとえば30~49歳までの方であれば、21.7(kcal/kg/日)という基礎代謝基準値が出ていますので、これに標準体重である53kgをかければ基礎代謝量が求められます。

活動量の値は、普通の方は1.75です。活動量が少ない人や1日6,000歩以下くらいの方であれば1.5、わりと激しいスポーツを毎日30分~1時間程度やっている方であれば2.0となります。注意していただきたいのは、基礎代謝量は標準体重が基準だということです。太っている方が現体重をかけてしまうと、数値が非常に高くなりそのまま太り続けることになってしまうので、標準体重をかけてください。

 

基礎代謝量を知るための、もうひとつの方法

基礎代謝量の算出方法のひとつに、ハリス・ベネディクトの予測式というものもあります。先ほどの基礎代謝量は日本国民の基礎代謝基準値で、日本人を対象とした調査データから出している数値なのですが、予測式は外国人を対象に決めた数値なので若干高めの値が出ます。計算すると、日本の基礎代謝量と予測式の基礎代謝量の数値には、100~200kcalほどの差が出ると思います。食事管理の観点から言うと、100kcal前後の差はそれほど大きな意味は持たないので、プラスマイナス100kcalくらいの幅でご自分の真の値があると捉えてください。

ぜひご自分の身長・体重、それから年齢で、どれくらいの基礎代謝量になるのか計算していただき、それをご自分の1日の摂取目標量と考えていただければと思います。

 

何のために食生活を改善するのか

食生活を改善することの最終目的は、「一人ひとりが健やかな生活を送る」ということだと思います。遺伝子はもちろん個々で異なりますし、人によって生活スタイルやパターン、人生の価値観も違いますよね。ですから、本当は個人個人が考えていかなければならないことなのです。

 

BMIの標準が22なのは、なぜ?

先ほどBMIの話をしましたが、なぜ標準が22になのかについてご説明します。

BMIを横軸に、合併症を起こしている数を縦軸にしたグラフは、Jカーブを描きます。BMIが高いと合併症を起こしやすくなり、低いと栄養障害、健康障害を起こしやすいということです。そして障害や病気を起こす確率が一番低い値を調べたところ、男性も女性も22だったのです。この値は日本も海外も一緒だったのですが、合併症を起こしやすくなるBMIの基準を決めたときに、諸外国は30でした。30くらいになると合併症の頻度が2倍になります。しかし、アジア人の合併症の頻度が2倍になるのは25でした。そのため日本人の場合は少し太り気味くらいでも要注意であり、メタボ対策が推進されているのです。

 

個人差に配慮した栄養管理を

科学や医学の進歩によって、栄養管理のためにさまざまなことが行われるようになりました。栄養状態を評価するための骨密度の検査や、食事や疫学の調査などがその一例です。また、身体活動を評価するために、体組成や心肺機能などが検査される時代になりました。その中で、体質も遺伝情報とされ、その情報から個人差に配慮した栄養管理の実施が推奨されてきています。

たとえば、食事の内容が全く同じでも、個々で遺伝子の状況は異なります。身体機能が低下している方と運動を続けている方とでも違いますし、医療を受けているか、あるいは薬を飲んでいるかによっても違ってきます。臨床の評価(身体機能、医療・医薬品の摂取状況等)と個人差の評価(遺伝子多型によるもの)が食事と相互に作用し、個々の代謝状態が決まります。ですから、単に食事だけではなく、身内に高血圧になった方がいるとか、心筋梗塞を起こした方がいるなどという観点で見て、注意をする必要があります。

 

心の状態は、代謝に影響する

代謝は、人生の価値観によっても違いが生まれます。ポジティブな考え方をする方とネガティブな方では、同じ食事をしても体の代謝状態が変わります。子どもで考えると、個食は非常に大きな影響を与えるということです。また朝型・夜型などの生活スタイルや、またその生活スタイルが日によって変わることによる生体リズムの変化で、当然ホルモンバランスも変わってきますし、そういう状況で同じ食事をしても代謝状態は変わります。ですから、トータルの食事管理をしていかなければいけないのです。

 

賢く食べて、健やかな毎日を

私たちは、最終的なバランスを主食・主菜・副菜といった食事のパターンでしか確認できません。それを維持しながら、感覚で構いませんので、長期的なスパンで体重変化や自分の健康状態を管理していきましょう。「賢く食べる」ということで、健康保持・促進のための食事を意識していただき、ご自分の食生活を見直すきっかけになれば幸いです。

 

[つづく]

「食と健康-実習編①心身ともに温まる冬食材のおいしいレシピ」を読む>>

 

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

 

 
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