<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=3995072687287837&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">

【料理アカデミー】食と美学-講義編①美をつくる要素〜“かたちといろ”のコーディネート〜

食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。

academy_coordinate1_1

 

講師:花見 保次(聖徳大学講師)
デザイン入門や色彩学、デザイン史などを担当。国内外のEXPO・見本市、商業施設などのデザインを手がけ、公共の色彩を考える会、日本展示学会などに所属。
(平成24年3月 講座実施時)
academy_coordinate1_2

 

講師:山川 やえ子(カラー&イメージコーディネータ)
聖徳大学オープン・アカデミー(SOA)で色彩やカラ関する講座を担当。日本色彩学会正会員。
(平成24年3月 講座実施時)

 

「美」について考える

今回の料理アカデミーの講義では、食事における「美」について花見保次先生と山川やえ子先生が解説をしてくださいます。
第1回目は、「美」をつくる要素についてのお話です。

 

“かたち”で感じる美しさ

日頃、わたしたちは見ることを通して、「心地よい」「美しい」「かわいい」などと感じます。そのようにいろいろな状況について「どんなものかな」と気分的に思うことが、美の感覚とつながっているのです。また、人間は視覚を頼りに行動をしています。「見る・見える・見せる」という行為は、主に“かたち”に関連します。まずは、その“かたち”についてご説明したいと思います。

 

生活の中の「美」

「美」は、美しい行為や話、芸術作品などに対して使われることが一般的に多いかと思います。「美しい」に関係する言葉はたくさんあります。麗しい、優れている、華やか、立派、そして旨い……。味が良いことも、もちろん「美」の範疇に入ります。
「美」は哲学用語で、「知覚・感覚・情感を刺激して内的快感を引き起こすもの」だとされています。内的快感なので、個人差があるのは当然ですね。「美」は、抽象的・客観的・普遍的・社会的・必然的ということに通じます。
「美」は、主に“かたち”と“いろ”の視覚現象によって感じる感覚です。

 

“かたち”を認識する条件

では、具体的に「美的に見える“かたち”と“いろ”」とはどういうことなのでしょうか。特に、“かたち”を感じる感覚は五感に通じています。

“かたち”を認識する条件として、以下の6つがあげられます。

1. 姿・格好

2. 色彩

3. 材質・材料

  ガラスや繊維、鉱物など、材質・材料の違いによって見る側の捉え方が変わります。

4.  肌理(キメ)・テクスチャー(texture)

  皮膚の表面の網膜状のパターンをテクスチャーと言い、その感覚でモノを認識します。

5.  光の現象

  照明の多くは上方からの光になりますが、この光が下方から入ると少し異様な感じになります。お化け屋敷など使われているテクニックです。そのような光の現象によって、同じかたちのものでも違う印象になります。

6. 物体の動き

  どんな形状のものでも、あるスピードで移動すると丸く見えたりするように、動きによって見え方が変わることがあります。

 

「美」をつくる要素【1】

「美」は、“統一(unity)”と“変化(variety)”の適当なバランスを条件としています。その両方の多様性と秩序性が、美的かどうかの基準になります。統一されているものは「美」、統一されていないものは「醜」と判断され、さらに統一されているものには多様性が含まれている必要があるのです。
たとえば、入学式などの整然とした式典の中、ひとりがちょっとでも違う格好をしているとすごく目立ちます。一方、整然としたものだけ見せられていると人間は飽きてきて違うものを求めることもあります。それぞれのバランスが、そのときの条件によって変わることが美的状況の難しさでもあり、また変化のおもしろさなのだと思います。
「美」の基準を表す言葉はたくさんありますが、それらを総称した表現が“統一”です。統一感があればまとまって見え、それが整えられて美しく感じるということですね。

 

「美」をつくる要素 【2】

もう少し具体的な要素として、“調和(harmony)”と“対比(contrast)”があります。“調和”があるというのは、“対比”の組み合わせのバランスでもあります。
もっと細かくいうと、“反復(repetition)”と“交替(alternation)”があげられます。“反復”は洋服の柄や、ネクタイなどの繰り返しの柄で見ることができます。“交替”は、「昼と夜」や「潮の満ち引き」、映画や演劇などでは幕間などがあります。
そのほかに、“律動(rhythm)”があります。さきほどの反復・交替と似ていますが、これらの言葉の中で唯一時間感覚が入った言葉です。それから“漸移(gradation)”。グラデーションというとわかりやすいと思いますが、だんだんと変化することです。

 

「美」をつくる要素【3】

“対称・均斉(symmetry)”という言葉があります。ヨーロッパのゴシック様式は左右対称の美で、ヨーロッパの造形を象徴するひとつの形です。もうひとつは、“非対称(asymmetry)”。これは日本人が最も好む美のかたちだといわれています。生け花や床の間飾り、それから服飾、女性の襟合わせのスタイルをよく見ると、全く左右対称ではないけれど左右対称形に感じる造形になっています。
それから“均衡(balance)”、これは見た目のバランスなので、感じ方には個人差があると思います。あとファッションでよく使われる、“比例・比率(proportion)”ですね。

 

「美」をつくる要素【4】

“図形(figure)と地(ground)”、というのもあります。これは、都市計画などでもよく使われる専門用語です。かたちには、浮き上がって見える“図形”とそれを強調して引き立てる背景や周囲の空間となる“地”があります。
多くの方はポートレートを撮ったときに顔立ちを一生懸命見られますが、実は背景とのバランスでものを見ているんです。背景の効果をあまり意識することはないと思いますが、図形はシンボリックなものだと考えたら良いかと思います。これらは刺激条件、観察者の経験など、個人によってものすごく変わります。

 

「美しさ」は人それぞれ

以上のような言葉がありますが、これを決めつけて使うことは良くないとわたしは思っています。
その例として有名なものに、「ルビンの壺」があります。見る人によって、壺にも人の顔にも見える図形です。パッと見て壺に見えた人は、左右のシルエットを意識すると壺が消えて顔が出てきます。反対に、パッとみたときに顔の画像に見える人もいるわけですね。見る条件よって壺に見えたり、顔が向き合って見えたりするのが「ルビンの壺」です。
このように、人によってモノの見え方は異なります。「美」は決めつけるものではないということは、以上の例からおわかりいただけたのではないでしょうか。「美」を感じ、人に伝えたいと思ったとき、それをうまく伝えるための方法として言葉があるのです。

次回は、色彩の基本について解説いたします。

[つづく]

 

『食の美学-講義編②色彩の基本〜“かたちといろ”のコーディネート〜』を読む>>

 

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

 

 

関連記事