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【料理アカデミー】食と文化「すしロールの文化」-講義編②太巻き寿司の文様と、つくるときのコツ

食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。

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講師:龍﨑 英子
千葉伝統郷土料理研究会主宰。昭和30年より独自に各地の農民から直に技術を習得。昭和57年、千葉伝統郷土料理研究会を設立。千葉県文化功労賞受賞、NHK関東甲信越放送文化賞、地方文化功労賞(文部科学省)受賞。(平成24年3月 講座実施時)
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アシスタント:峰岸 喜子(栄養士)
(平成24年3月 講座実施時)

 

講義編①のおさらい

前回の講義編①では、太巻き寿司の文化をはじめ、千葉で親しまれている寿司文化についての講義の内容をお届けしました。
今回は、龍﨑先生も魅了されたという太巻き寿司の文様についてご紹介します。

 

男性から女性へ。太巻き寿司をつくる人たち

昔は、寿司つけの名人が村にいました。名人はみんな男性で、巻くのは男性の仕事。女性は、材料を運び、できあがった太巻き寿司を切って盛り付けるのを担当していたそうです。
ところが、戦争を境にして名人たちがいなくなり、太巻き寿司をつくる人がいなくなってしまいました。そこで、女性たちが男性たちの仕事を思い出しながら復活させたものが、現在の太巻き寿司になったといわれています。これは、昭和25年頃のことです。
男性が巻いていた頃の文様は大したことはなかったのですが、女性が巻くようになってから、新しい文様が生み出されるようになりました。

 

女性が生みだしたユニークな文様の数々

海苔巻きには、「ダイヤモンド」という巻き方があります。これは、あるひとりの女性が考え出したものです。
尾崎紅葉の『金色夜叉』という小説を読んだ女性が、自分の夫に「(登場人物のように)ダイヤモンドが欲しい」とねだったら「百姓にダイヤモンドは必要ない」と言われてしまったのだそうです。その悔しさから、「ダイヤモンド」という巻き方が誕生したのだといわれています。
「鶴」の文様も、ユニークなきっかけで誕生しました。これは、畑の上を飛んでいる飛行機を見た女性が、「どうしても巻いてみたい」とずっと考えていたところ、パッとひらめいたのが、「鶴」の模様だったのだそうです。JALの飛行機から着想を得たことは、明らかですね。

そのほかにもたくさんの文様がありますが、それらについては私の著書『後世に伝えたい創作・考案記録』にまとめてありますので、興味のある方は、ぜひお手にとってみてください。

 

本当の太巻き寿司は、ご飯がとっても甘い!

みなさんが親しんでいる太巻き寿司は甘くないかもしれませんが、本当の太巻き寿司のご飯は、とっても甘いのです。五目寿司をつくるとき、酢1カップに対して普通は多くても砂糖は1/3カップ程度なのですが、千葉の太巻き寿司は1杯半の砂糖を入れます。
砂糖を使うのには理由があって、砂糖が多いとご飯がポロポロにならないのです。農家の人は、太巻き寿司を手土産にしていたのですが、手土産を持って帰る時間が遅いと家族が口にするのは翌日になります。翌日になると冷たくなってしまっているので、お餅を焼く火鉢の上で、切った太巻き寿司を焼いて食べていたのですが、砂糖が多いと焼いてもご飯がポロポロにならずに食べられたのです。
ただし、多くの方にはあの甘さは理解できないのではないかと思います。地元の人にとっての「懐かしい味」というわけですね。

もともと千葉では、農民がお手製の太巻き寿司をパックに詰めて売っていたそうで、最近では「道の駅」でも売られています。このようにして太巻き寿司は多くの人々に親しまれ、現在まで残っているのです。

 

太巻き寿司に欠かせない材料と道具

太巻き寿司についてのお話をしましたが、実際につくるときのこともお話ししたいと思います。次回以降の実習編では、太巻き寿司のレシピをご紹介しますが、まずはつくる際に必要な材料と道具をご紹介します。

 

●酢飯のための「すし粉」

すし粉は、酢飯をつくるための粉末のすし酢です。白とピンクの2色があります。

酢飯をつくるためには、合わせ酢をつくって、固めに炊いたご飯に酢を混ぜて少し蒸らし、それを冷ますという行程が必要です。その行程が面倒だという方も多かったので、すし粉をつくりました。

すし粉を使えば、普通に炊いたご飯に混ぜるだけで酢飯ができるので簡単です。ぜひ活用してみてください。

 

●海苔

海苔は、長方形のものがほとんどですが、千葉では、海苔を縦長にして巻きます。東京では横長方向に置いて巻くことがほとんどだと思います。長い方を縁にすることで、より大きく太く巻きたいという思いが込められています。

千葉風の太巻き寿司をつくる際には、海苔は縦長を維持することを心がけてみてください。

 

●巻き簾(まきす)

太巻きの文様などをつくる小さいパーツをつくる際には、細巻き用の小サイズを使います。

中巻というのは、東京の太巻き用の巻き簾で、海苔巻き用に使います。海苔巻きのときに、大サイズを使っている方もいるのですが、これは卵で巻くときのために特別につくられた巻き簾なので、海苔巻き用には中巻を使いましょう。

 

●エンボス手袋

ご飯粒が手につかないようにするための便利な道具です。

手を酢水で濡らすという方法もありますが、その際には、酢水を手に擦り込むようにしっかり染み込ませてください。酢水をつけただけではあまり効果はありませんが、しっかり擦り込むと、ご飯粒がつきにくくなります。

 

文様をきれいにつくる巻き簾の使い方

太巻き寿司の中央に、きれいに文様が入っているようにするコツをご紹介します。

一般的な太巻き寿司は、海苔の上に具材を乗せたら巻き簾を手前から向こう側に向かって巻いていきますね。ですが、千葉の太巻き寿司は少し異なります。具材をすべて乗せたら、巻く前に巻き簾の両端を持ち上げて形を整えます。そのときに必ず「蓋飯」を入れます。
蓋飯は、文様が中央にきちんと収まるように加える、ほんの少しのご飯のことです。蓋飯を加えて文様が中央にくるように整えたら、巻き簾で海苔の左右を合わせて締めます。そうすることで、切ったときに文様が中央になっているきれいな太巻き寿司がつくれるのです。
太巻き寿司をつくる際には、ぜひこの「蓋飯」を忘れずにつくってみてください。

 

実習編のお知らせ

次回からは実習編として、太巻き寿司のレシピをご紹介します。
基本の酢飯づくりから、花やかたつむりの文様のものなど、基本的な文様4種類の巻き方をご紹介します。

今回解説した巻き簾の使い方も、実習編では詳しくご紹介しますので、ぜひご覧になってみてください。休日などの時間のあるときに、ご家族みなさんでつくってみるのもおすすめですよ。

次回の実習編①では、基本の酢飯のつくり方と「花」の太巻き寿司のつくり方をご紹介します。

 

[つづく]

「食と文化-実習編①基本の酢飯、花の太巻き寿司」を読む>>

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

 

 

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