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【料理アカデミー】食と健康vol.2-講義編①「食生活の改善でメタボ解消!」

食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。

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講師:福尾 惠介
武庫川女子大学教授。医学博士。武庫川女子大学栄養科学研究所所長。
(平成25年10月 講座実施時)

 

「食と健康」ーーシニア世代の栄養管理について

今回は、「食と健康」というテーマで開催された講義の後編を、WEB版として特別にお届けします。前編は「食事学」についての講義をご紹介しましたが、後編は「シニア世代の栄養管理」をトピックに3人の先生にお話しいただいた内容をご紹介します。
講師は、武庫川女子大学から福尾惠介先生、前田佳予子先生、鞍田三貴先生の3人。まずは福尾先生の講義「高齢者の特徴を踏まえた健康増進について」をご紹介します。

 

脂肪とメタボリックシンドローム

わたしの講義では、まず体組成(筋肉や脂肪)に着目した、高齢者の方の特徴と健康についてお話ししたいと思います。最初にお話ししたいのは、脂肪についてです。

年齢が上がるにつれ、体重の中の「脂肪組織」の割合が増えます。たとえば女性の場合、高齢になると20歳頃の体脂肪量と比べて2倍近くまで増えます。男性も同様に、年齢とともに脂肪組織が増えやすい傾向があります。一方、「除脂肪組織」と呼ばれる筋肉や骨は、年齢とともに減っていきます。筋肉量は体の部分によって減り方が異なりますが、特に太ももの前の方の筋肉が大幅に減るという特徴があります。

脂肪が増えることで、メタボリックシンドローム(以下メタボ)につながります。男性は、年齢が上がるにつれてメタボ予備軍が増えていきます。女性は男性に比べるとメタボになりにくいのですが、その疑いがある人は、40〜50代と比べて高齢者だと2〜3倍ほど増えます。つまり、男性より伸び率が大きくなるということです。

メタボは糖尿病や高血圧の原因になりますので、高齢になるほどそのような病気を起こしやすいということです。肥満によって起こる健康障害は主に糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、痛風、それから梗塞や狭心症、脳梗塞などの生活習慣病が挙げられます。それ以外に、変形性膝関節症もあります。

 

「沖縄クライシス」ーー短命の理由として考えられること

1984年(昭和60)に日本で第1位の長寿県だった沖縄県は、1990年に男性が5位に転落しました。2000年に26位まで落ちたことで、「沖縄クライシス」といわれました。また、沖縄はメタボになりやすい人が多いともいわれています。BMIが25以上、つまり肥満の人の割合が増えていることがその理由です。ですが、そんな沖縄でも高齢の方は長寿です。つまり、若い人がメタボになって寿命が短くなっているということです。アメリカなどの欧米の食生活が入ってきたり、車に乗るようになったりしたため、寿命が短くなるという現象が起こっています。肥満は、寿命に関係するということですね。

 

「皮下脂肪」と「内臓脂肪」。健康に影響があるのはどっち?

脂肪には、「皮下脂肪」と「内臓脂肪」があります。このうち健康に直結するのは、内臓脂肪だと考えられています。

皮下脂肪と健康の関係を見るために、皮下脂肪除去の手術前後で、さまざまな測定を行いました。糖尿病にかかっている人とかかっていない人で比べたのですが、皮下脂肪除去の手術をした人は体重や体脂肪は減りましたし腹囲も減りましたが、血圧は変わりません。さらに、血糖値も脂質も変わらない。このことから、皮下脂肪を取っても健康状態や代謝は変わらないといわれています。ですから、体の健康に直結するのは内臓脂肪だろうと考えられていて、むしろ最近では皮下脂肪は良いことをしているという説も出てきています。

 

内臓脂肪はなぜ悪いのか?

昔は、脂肪組織はエネルギーを貯めるところだと理解されていました。しかしいまでは、内臓脂肪の増加によって、血液中に悪玉菌が増えるということがわかっています。動脈硬化などの慢性炎症や病気との関係も注目されています。内臓脂肪が増えると、炎症を起こす物質(サイトカイン)が増え、血圧を上げる物質やインスリンの効き目を悪くする物質、血栓を起こす物質も増えます。

もちろん、脂肪組織からは善玉菌も出ています。悪玉菌が減ると、糖尿病や動脈硬化を起こしにくい物質が出るのです。善玉菌が減ることでインスリンの効きが悪くなるので、糖尿病や高血圧になり悪性腫瘍も増えるといわれています。内臓脂肪を完全になくす必要はありませんが、できるだけ増やさないほうがよいということです。

 

内臓脂肪を減らすためのポイント①

内臓脂肪を減らすためのひとつめのポイントは、「3食きっちり食べること」です。
食事の栄養分を小腸で吸収するときには、エネルギーを使います。たとえば朝食を抜くと、栄養素を吸収するためのエネルギーを使わずにお昼をむかえるので、昼食のときにどんどん吸収してしまいます。そうなると昼食時に血糖値が上昇し、結果的に内臓脂肪の増加につながってしまいます。

これを利用しているのがお相撲さんです。お相撲さんは1日2食で生活しています。ですが、彼らはすごく激しい運動をしているので内臓脂肪は増えません。皮下脂肪を増やすことで体重を重くしているのです。反対に、食べる回数を増やせば太りにくくはなりますが、ずっと食べ続けていれば体重は増えます。

 

内臓脂肪を減らすためのポイント②

もうひとつのポイントは、「夜遅くに食べないこと」。
睡眠中は、消化吸収をつかさどる副交感神経が優位になります。たとえばライオンは、狩りをするときまで交感神経を緊張させて血圧を上げておき、瞳孔がしっかり開いた状態で獲物を捕まえに行きます。
その後、エサを食べてお腹がいっぱいになったら、グタっと寝ます。寝ることで、栄養素をしっかり吸収させているのです。この行動は自然の理にかなっているのですが、人間がそれをやると夜中にすごく吸収することになってしまいあまりよくはありません。寝ているときは、寝返りをうつ程度しか動かないのでエネルギーが余ってしまい、内臓脂肪の増加につながってしまうのです。

 

内臓脂肪を減らすポイント③

3つめのポイントは、「筋肉を増やす」ということです。
内臓脂肪を減らすには、インスリンの効き目を悪くするものを除くことが有効です。筋肉は、インスリンの標的臓器といい、筋肉が増えるとインスリンの効き目がよくなります。そのため、筋肉を増やすことは、内臓脂肪を減らしたり、病気を防いだりする上でとても大事なことだといわれています。

 

筋肉が重要。その理由とは?

冒頭でもお話ししましたが、男女ともに年齢が上がるにつれて筋肉量は減ります。特に、足の筋肉が減るといわれています。足の筋肉は、血液を心臓に送り返すポンプのような働きをしているので、循環器にも影響します。足の筋肉が減り血液がうっ滞すると、血栓ができやすくなります。足にできた血栓が、脳梗塞や肺梗塞の原因にもなるのです。足の筋肉を鍛えることは、ポンプの働きを鍛えることになりますので、血栓予防にも効果的です。

また、筋肉量が減ると基礎代謝が低くなり、痩せにくい体になります。それが、内臓脂肪の増加にもつながります。基礎代謝が高い人は、寝ている間もある程度代謝が続くので、一日中コンスタントにエネルギーを消費していることになります。そのほかにも、筋肉量の減少によってインスリンの効き目が悪くなったり、熱が出にくくなったりします。若い人が肺炎になると、高い熱や咳が出て息苦しくなったりしますが、高齢者の方は咳や熱が出にくいので、発見が遅れるのだそうです。

 

内臓脂肪を減らすーー食事制限の注意点と運動の併用

内臓脂肪を減らすための食事制限には、注意点があります。
食事制限をすると、体重は減りますが脂肪は減りません。なぜ体重が軽くなるのかというと、除脂肪体重(筋肉などの体脂肪を除いた部分)が減っているからです。筋肉が減ると基礎代謝も下がり、結果的に痩せにくい体になってしまいます。そのため、食事制限のみのダイエットをすると、一旦体重が減ってもその後なかなか減らず、しばらくするとリバウンドしてしまうことがあるのです。

そうならないために大切なのが、運動です。食事制限と運動を併用すると、体重と体脂肪は減っても、筋肉量は減らないため、継続して体重を減らすことができます。その際に適しているのは、激しい運動よりも軽めの運動です。激しい運動では主に糖質がエネルギーになるのですが、軽めの運動をすると内臓脂肪を減らせることがわかっています。軽めの運動というのは、少し早足で歩くなどの心拍数120程度の運動です。また、太極拳のようにゆっくりした運動を椅子に座っておこなっても、筋肉を十分に使えるので効果が期待できます。

 

効果的な運動のタイミングは?

運動をするタイミングは、食後がおすすめです。理由はいくつかあるのですが、血糖値との関係についてお話ししたいと思います。
運動をすると、血液は筋肉にいきます。すると、腸に血液があまりいかなくなるので消化吸収を抑えることができ、血糖値の上昇が緩やかになります。この方法は糖尿病の方に指導している方法でもあるのですが、大体食後90分が目安です。また、運動をすると交感神経が活性化されるため、消化吸収をつかさどる副交感神経系が抑えられ、血糖値の上昇が緩やかになります。そのような理由から、食後の運動をおすすめしています。

運動をする際、膝の悪い方や運動に制限のある方は、かかりつけの先生に相談をしてください。特に心臓の病気をお持ちの方は、狭心症や心筋梗塞を起こすと大変ですので、きちんと確認してください。

 

運動は、徐々にレベルアップを

運動に関してもうひとつのポイントは、徐々に運動レベルを上げていくということです。椅子に座っての運動でも十分だといわれているので、急に激しい運動はせず軽い運動から始めてみてください。また、糖尿病の人は低血糖の恐れがあるので、朝食を食べずに運動するのはやめましょう。食事をしても低血糖を起こす危険があるので、対処方法としてアメやジュースを準備した方がいいかもしれません。

 

[つづく]

「食と健康vol.2-講義編②老化と食事。栄養管理で気をつけたいこと」を読む>>

 

この記事は、平成25年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

 

 

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